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【漫画】焰の眼(1) の感想

焔の眼(1) (アクションコミックス)敗戦国の日本で占領軍に抑圧される日本人たち。救いのない世界で翻弄されながら生きていく少女・沙羅(さら)が、圧倒的な強さを備えた獣のような格闘家・陀大膳黒(だたいぜんくろ、通称:クロ)と出会い、彼を心のよりどころとして強く成長していく物語・・・だと思っていますがどうなっていくのかな。

押切蓮介作品はミスミソウに続いて2つ目

押切蓮介作品を手に取ったのはミスミソウに続いて焰の眼が2つ目になります。独特の味のある絵柄での人間の感情表現、繊細な憂いに満ちた微妙な表情から、生の悪意剥き出しの感情爆発まで、また「善意」と「悪意」のメリハリのある描き分けに圧倒されたのが手に取るきっかけになりました。同氏の作品にはピコピコ少年ハイスコアガール等コメディもありこちらも読みたいのですが、まずはホラー、シリアス路線から手を出してみました。

読者は心を揺さぶられるのではなく叩き折られる

焰の眼でもこの絵柄と感情表現は健在。戦争によって占領されているという極限状態の中で、登場人物たちが感情を抑える必要もなく、剥き出しの欲望や悪意を爆発させていく様子が凄まじいです。とにかくショルゴール占領軍、神衛隊のやることが鬼畜で、日本人が理不尽に奪われ、虐げられ、容赦なく殺されていく様子がこれでもかと描かれます。そんななか主人公・沙羅は日本人とショルゴール人とのハーフで赤い眼を持つという、どちらからも迫害を受ける対象であり、慰安所の女将に気に入られて何とか生き永らえているという無力な存在として描かれ、やはり虐げられます。敗戦国のドン底で踏みつけられる日本人と主人公、残酷な暴力や殺人描写、性的描写があるので耐性の無い人はちょっとキツイかもしれません。何かを感じるというより、まず心が折れます。

理不尽なものをさらに超える理不尽な暴力でねじ伏せていく爽快感

救いの無い世界ですが、読者には一つの希望が与えられています。冒頭(6年後)で座間の占領軍を壊滅させた反抗組織「瓦礫の獣」を率いていた少女はおそらく沙羅で、徒手で兵隊と渡り合えるほどの格闘家になっていました。この6年で彼女の身の上に何が起こったのか、この作品はそれを追って物語だと思います。
虐げられ無力だった沙羅に与えられた希望は、彼女を貞操の危機、生命の危機から救った獣のような風貌の日本人格闘家・陀大膳黒(だたいぜんくろ、通称:クロ)との出会いでした。彼女は何度も理不尽に虐げられますが、その度にクロに助けられます。クロは徒手だけで近代兵器をものともしない圧倒的な力を持つ存在として描かれ、ほとんど一撃で敵を倒して行きます。(まるでワンパンマン
理不尽なものをさらに超える理不尽な暴力でねじ伏せていく様は、爽快に感じます。
まさに「力なき正義は無力」。

希望の光をみた沙羅の運命はどうなっていくのか、見守っていきたいです。

現実世界の出来事との紐付け

作品中には意味ありげに日付が出てくるので現実世界の出来事と紐付けてみました。
今後なにか物語のヒントになる?かもしれません。
1929年10月25日  ウォール街大暴落/世界恐慌
1945年8月15日  第二次世界大戦終結
1951年9月8日  サンフランシスコ講和条約 調印

あらすじ

1951年9月8日

座間のショルゴール占領軍は、成人にも満たない少女が率いる反抗組織「瓦礫の獣」によって壊滅させられる。

1929年10月25日

中央アジアに位置する小国「ショルゴール」は世界五十カ国に宣戦布告し、その圧倒的な武力により大国を次々と打ち負かす。そして、敗北した国は「自由な服従」か「無惨な死」の二択を迫られる。

1945年8月15日

ジョルゴールに破れた日本は日本人の誇りをかけて「無惨な死」を選択し、これにより日本は滅びの時代へ突入して行く。日本人たちはジョルゴール占領軍に抑圧され、理不尽に殺されるような生活を送っている。
日本人とジョルゴール人のハーフで赤い眼をした少女・沙羅(さら)は、慰安所の女将に気に入られ下女として働きながら物置小屋に住んでいたが、ある日店にやってきたショルゴール神衛隊の鬱憤ばらしで襲われる。そこへ現れた異様な風体の日本人格闘家、陀大膳黒(だたいぜんくろ、通称:クロ)の一撃必滅拳に助けられる。
数日後、日本人の小僧共に襲われた沙羅を再びクロに助けられる。
オセ・アガートラーム元帥が占領軍総司令官として着任、夜間外出禁止令により19時以降に外出していた日本人は容赦なく殺され、意識改革された神衛隊の日本人への抑圧はさらに強くなる。
市場に買物に出た沙羅と慰安婦たちは神衛隊に難癖をつけられ、次々と銃殺されてしまうが、1人残された沙羅は三度クロに助けられる。

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