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【漫画】乙嫁語り(6) の感想

乙嫁語り 6巻 (ビームコミックス)

<あらすじ>
物語はカルルクとアミルの住む街へ戻り、大人扱いして欲しいカルルクと、心配でつい子供扱いしてしまうアミルは夫婦喧嘩をしていた。「僕はそんなに弱くない、アミルを残して死んだりしない」というカルルクの言葉にまだ納得できないアミルだったが、ふとしたカルルクの仕草に彼の成長を感じるのだった。

2巻より:ハルガル(アミルの一族)はこの地一帯の地主であるヌマジに嫁いでいた娘が死んだ事で縁が切れ、放牧地から追い出されようとしていた。ハルガルはヌマジとの姻戚関係を保つために嫁いだばかりのアミルに目をつけ力づくで連れ戻そうとするが街ぐるみの抵抗に遭い失敗した。

放牧地を失い困窮したハルガルは生き残る為にアミルの住む街を襲って土地を奪おうと画策する。古い分家でロシアの近代兵器を多数所有するバダンと手を組んだハルガルだが、アミルの兄アゼルはバダンを信用していなかった。街を襲撃したハルガルとバダンだったが、バダンが裏切り乱戦となる。アゼルは状況を察知し、バダンの頭を打ち取り、ハルガルを撤退させようとする。街の中心部ではカルルクとハルガルの長(アミルの父)が戦っていた。カルルクの窮地を救おうとしたアゼルだったがそれより速くアミルの矢がカルルクを救う。夫を守る為に父親に刃を向けるアミル。アゼルを追ってきたバダンの砲撃で再び乱戦となり、それを退けたアゼルだったが力尽き、勢いを取り戻した街人に取り押さえられる。そして、藩王の治安部隊の到着により戦いは終結した。

<感想>
アミルの姉さん女房ぶりは健在でした。腕相撲でアミルに負けてしまうカルルクでしたが、そうは言っても男の子、あと数年もすれば身長も、腕力もアミルを上回ってしまうでしょう。それに気付いたアミルも少しだけカルルクを大人扱いしてくれるようになりました。
そんなほのぼのとした日常が続くと思いきや、再び襲ってきたハルガル(アミルの父と兄)とバダンとの激しい戦闘となります。騎馬と弓矢、ロシアの近代兵器(軽量砲、小銃)が入り乱れての戦闘シーンには圧巻。
大規模な砲撃で混乱したところを騎馬で一気に攻め込んで行政所を攻め落とすという戦術でしたが、バダンの裏切りが無ければ街は落とされていたでしょう。それにしてもバダンの裏切りはちょっと早過ぎたんじゃないでしょうか?そして、やっぱりアミルに助けられるカルルク。

人々が生きる為にギリギリの生活をしていたこの時代、血の繋がりが切れ土地を追われたハルガルが生き残るために街を襲うという結論に至りますが、仕方なければ襲って奪うという発想は遊牧民にとってそう珍しいことではなさそうです。彼らには土地を所有するという概念がないうえに放牧の為に広大な土地が必要になりますから、農耕民が増えて土地が所有されて行くとどんどん住み辛くなります。また、近代兵器の登場により騎馬で戦う彼らが活躍する場面も奪われて行くことを考えると暗い未来しか浮かんできません。
巻頭でアゼルが馬を駆け、狩りをするシーンはとても美しく神秘的だったのですが、滅んで行く運命なのですね。

今回ハルガルが街を襲うのは2回目ですがその原因は姻戚関係によるものでしたし、アミルがいたから街が襲われた(もちろんアミルのせいではないのですが)と考える輩がいるのでは?と思えるのですが、誰もアミルを責めず守ろうとしているところが、この時代の民族観というか血の絆の強さというものを感じました。

森薫さんの描く乙嫁語り、今回も堪能させていただきました。
美しく描き込まれたそれでいて線が整理された絵、わかりやすく整理され。教訓がこめられたストーリー、突っ込んだ時代考証とその中で生き生きと描かれる登場人物たち。素晴しすぎます!

さて、パリヤさんの登場ページを読み直して癒されよう。

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